人より努力しているはずなのに筋肉がつかない…
脂肪が落ちにくい体質ってあるの?
自分は筋肉がつく才能がないのか…
こんな方に向けた記事です。
筋トレを数年やっていると必ず考えるのが体質、つまり遺伝的才能です。
「筋量や重量が頭打ちになっているが、同じ年数トレーニングをしている知人は筋量や重量が伸び続けている」
「減量が得意な人の食事を真似しているのに自分は全然絞れない」
こんな経験をしている人も多いのではないでしょうか。
残酷なことに筋肥大や脂肪燃焼のしやすさにおいて、遺伝的才能は大いに関係します。
今回はボディメイクに関連する遺伝子の種類と特徴について解説いたします。
ボディメイクに関連する遺伝子
ボディメイクに関連する主な遺伝子はいくつかありますが、今回はACTN3遺伝子・ACE遺伝子・PPARGC1A遺伝子・肥満遺伝子の4つについて解説していきます。
ACTN3遺伝子・ACE遺伝子・PPARGC1A遺伝子は運動能力に関する遺伝子、肥満遺伝子は代謝能力(=痩せやすさ)に関する遺伝子になります。
ACTN3遺伝子
速筋・遅筋タイプに関する遺伝子
速筋タイプ・遅筋タイプという言葉を聞いたことがあるかと思います。
この速筋・遅筋のタイプを決めるのがACTN3遺伝子です。
この遺伝子は、筋たんぱく質同士をつないだり速筋の新陳代謝を司るたんぱく質の遺伝子です。(別名:α-アクチニン3)
ACTN3遺伝子は、筋線維の配列の維持や収縮を正しくコントロールする役割を担っており、ACTN3遺伝子が多く存在するほど速筋タイプに近づきます。
一般的には、速筋型・両筋バランス型・遅筋型の3タイプに分かれます。
タイプ①:速筋(白筋)型 (R/R型)
速筋線維の割合が高く、瞬発力を要するスプリント・パワー系の運動に適しているタイプです。α-アクチニン3が最も多く存在しています。
この速筋型の方が筋肥大においては優れているといわれており、一流のボディビルダーはこの遺伝子タイプであることが多いです。
また、アフリカ系の黒人のうち、80%ほどがこの速筋型の遺伝子タイプです。短距離走などの瞬発力系の競技はもちろん、ボディビル競技やフィジーク競技においても、上位に君臨している選手に黒人が多いのも頷けます。
これに対して日本人は20%ほどしかこのタイプに属さないということが報告されているので、日本人でこのタイプに属する人は筋肥大において「才能あり」といえます。
タイプ②:両筋バランス型 (R/X型)
速筋と遅筋のバランスが良く、瞬発力および持久力のどちらを要する運動にも適している万能タイプです。α-アクチニン3の量は標準です。
日本人の半数以上がこのタイプに属します。(2014年の報告では54%)
タイプ③:遅筋(赤筋)型 (X/X型)
α-アクチニン3が存在しないため、遅筋線維の割合が高く、持久力を要する運動に適しているタイプです。
日本人をはじめとしたアジア人の約30%がこのタイプに属しているということがわかっています。
遅筋型の人は筋肉が傷つきやすく、筋力低下からのリカバリーも速筋型の人と比べると遅いことがわかってきています。ですので、速筋型の人と遅筋型の人が同じレベルで激しい筋力トレーニングを行なうと、遅筋型の人はオーバートレーニングに陥りやすいと考えられます。
これらのことから、筋肥大という点だけに着目すれば、遅筋型は少し不利な遺伝子タイプであることを認めざるを得ないかもしれません。
ACE遺伝子
血管拡張能力に関する遺伝子
ACE遺伝子はアンジオテンシンという物質を活性型に変化させる酵素を産生する遺伝子であり、血管の収縮や膨張、血圧の制御に重要な役割を持っています。
この遺伝子が”DD型””DI型”の場合、運動能力(無酸素運動)が高い傾向にあると報告されています。ACE活性の低い人(I/I型)は、血管拡張能が高いため筋肉への栄養や酸素の供給に優れています。
タイプ①:血管拡張型(I/I型)
筋肉へ酸素や栄養を送り届ける力が優れており(血管拡張能が高い)、運動による疲労を感じにくいタイプ。
持久系の運動に適しており、筋持久力トレーニングで効果が出やすいという報告があります。無酸素条件下で強いため、一流登山家に多いタイプになります。
タイプ②:血管拡張/収縮バランス型(I/D型)
筋肉へ酸素や栄養を送り届ける力は標準で、運動による疲労は標準的です。
持久系の運動に適しており、筋持久力トレーニングで効果が出やすいという報告があります。
タイプ③:血管収縮型(D/D型)
筋肉へ酸素や栄養を瞬間的に送り届ける力が優れており、瞬間的に力を出すことが得意なタイプ。瞬発力を要する運動に適しています。
瞬発力が高いので、筋トレなどの無酸素運動に適したタイプです。
PPARGC1A遺伝子
トレーニング体力に関する遺伝子
この遺伝子は、筋肉内のミトコンドリアの生合成やその機能の調整において中心的な役割を果たしているPGC-1αの遺伝子です。
要は細胞にとってのエネルギー製造工場であるミトコンドリアが、どれぐらい”増殖しやすいか”ということを決める遺伝子ということです。
ミトコンドリアが増殖しやすければ、エネルギー産生量も高く保持されやすいため長時間にわたってより多くのエネルギーを必要とするトレーニングに適応しやすいということになります。
タイプ①:ミトコンドリア高増殖型(G/G型)
ミトコンドリア増殖能が高いため、運動の継続によりエネルギー産生量も高く、運動強度を高めても長時間効率よく運動が行なえるタイプ。
タイプ②:ミトコンドリア標準増殖型(G/S型)
ミトコンドリア増殖能は標準的で、運動の継続によりエネルギー産生量が少しずつ増え、運動がだんだん楽に行なえるタイプ。
タイプ③:ミトコンドリア低増殖型(S/S型)
ミトコンドリア増殖能は低いため、運動の継続によりエネルギー産生量も緩やか、運動強度は低く長時間運動しないと体が運動に適応してこないタイプ。
肥満遺伝子
肥満遺伝子は誰もが持っている遺伝子で、エネルギーの産生や利用などに関与しており現在約50種類以上が確認されています。その中でも代表的なADRB3遺伝子・UCP1遺伝子・ADRB2遺伝子の3つについて解説します。
肥満遺伝子の説明の前に、遺伝子の「型」について説明します。
遺伝子にも、血液型のように「型」があります。遺伝子の「型」については、血液型と同じように、両親がもつ遺伝子の「型」によって決まります。
肥満遺伝子の「型」には、AA型・AG型・GG型の3種類があります。そして、AA型を野生型、AG型・GG型を変異型といいます。
肥満遺伝子が野生型であればその遺伝子本来の能力が機能しますが、変異型の場合はその遺伝子本来の能力が弱まってしまうのです。
例えば、肥満遺伝子のひとつであるUCP1遺伝子は脂質代謝に関与する遺伝子ですが、UCP1が野生型(AA型)だと脂質を代謝しやすい体質となります。一方、UCP1が変異型(AG型・GG型)だと脂質を代謝しにくい体質(=脂質で太りやすい)ということになります。
つまり、どの遺伝子が変異型かどうかで”太りやすさ”や”痩せやすさ”が先天的に決まるということです。
日本人の健常者の約97%がADRB3遺伝子、UCP1遺伝子、ADRB2遺伝子のいずれかに変異があるという統計結果がありますので、なにで太りやすいかというのは人によって大きく異なります。
肥満遺伝子① ADRB3遺伝子
ADRB3遺伝子はノルアドレナリンというホルモンの受容によって生じる脂肪の分解、燃焼に関与している遺伝子です。
この遺伝子が変異型(AG型GG型)であれば内臓脂肪が蓄積されやすく、ウエスト周りから太くなる傾向があります。
インスリン抵抗性にも関与する遺伝子ですので、この遺伝子が野生型(AA型)であれば糖質を代謝しやすいということになります。逆に変異型(AG型GG型)であれば糖質で太りやすいということです。
高炭水化物でも身体が絞れる人はこの遺伝子がAA型である可能性が高いといえます。
肥満遺伝子② UCP1遺伝子
UCP1遺伝子は褐色脂肪細胞における熱産生に関与しています。
この遺伝子が変異型(AG型GG型)であれば、体温が低下した際に皮下脂肪を燃焼させる効率が悪く、油脂を摂り過ぎると太りやすい傾向を示します。
肥満遺伝子③ ADRB2遺伝子
ADRB2遺伝子はアドレナリンというホルモンの受容によって生じる脂肪の分解・燃焼に関与する遺伝子です。
この遺伝子が 変異型(AG型GG型)であれば、 特にたんぱく質をエネルギーとして早く消費してしまう傾向があり、筋肉がつきにくい傾向にあります。
自分の遺伝子タイプを知るには?
今回紹介した遺伝子タイプについて、自分がどのタイプなのか気になる方も多いと思います。自分の遺伝子タイプについては、遺伝子検査キットで調べることができます。
ただし遺伝子調査キットについては、数多くの企業が提供しており、どのキットを選んでいいのかわからないと思います。
そこで今回は、ACTN3遺伝子・ACE遺伝子・PPARGC1A遺伝子・肥満遺伝子を調べることができる遺伝子検査キットを3つご紹介いたします。
GeneLife Genesis2.0
GENE LIFE社が提供する遺伝子調査サービスですが、今回紹介したボディメイクに関連する遺伝子はもちろん、肌質、行動特性等多岐にわたる項目を検査することができます。
YouTuberのサイヤマングレートさんもこちらの遺伝子検査キットで自身の遺伝子タイプをチェックしています。
費用は決して安くはありませんが、ボディメイクに関する遺伝子だけではなく、その他多くの遺伝子特性についても調べることができるので、自身の体質についてとことん知りたいという方にはおすすめです。
【費用】14,900円(税込)
【調査期間】約1ヶ月
【検査できる遺伝子】
- ACTN3遺伝子
- ACE遺伝子
- PPARGC1A遺伝子
- 肥満遺伝子(ADRB3遺伝子・UCP1遺伝子・ADRB2遺伝子)
- その他300項目以上の遺伝子特性
DNA EXERRCISE エクササイズ遺伝子検査
ご購入はこちらからハーセリーズインターナショナル社が提供する遺伝子調査キットです。
こちらの遺伝子キットではACTN3遺伝子・ACE遺伝子・PPARGC1A遺伝子の3種類の遺伝子特性について調べることができます。
費用が比較的リーズナブルですので、運動能力に係わる遺伝子だけを調べたいという方にはこちらのキットがおすすめです。
【費用】7,700円(税込)
【調査期間】約15営業日
【検査できる遺伝子】
- ACTN3遺伝子
- ACE遺伝子
- PPARGC1A遺伝子
DNA EXERRCISEダイエット遺伝子検査
ハーセリーズインターナショナル社が提供する遺伝子調査キットです。
こちらの遺伝子キットでは今回紹介したADRB3遺伝子、UCP1遺伝子、ADRB2遺伝子といった肥満遺伝子について調べることができ、更に「高カロリー嗜好」「過食嗜好」といった食行動に関する遺伝子についても調べることができます。
自身の太りやすさや食行動についての遺伝子だけを調べたいという方にはこちらのキットがおすすめです。
【費用】7,425円(税込)
【調査期間】約15営業日
【検査できる遺伝子】
- 肥満遺伝子(ADRB3遺伝子・UCP1遺伝子・ADRB2遺伝子)
- FTO遺伝子(高カロリー嗜好遺伝子)
- FTO遺伝子(過食傾向遺伝子)
まとめ
遺伝子タイプは生まれ持ったものなので、努力では変えられない要素です。
しかし遺伝的に恵まれていないからといって、悲観することはありません。遺伝的に恵まれていなくても、努力することで「今の自分」よりは確実に成長することができます。
自身の遺伝子タイプを把握したうえで、自分に合った食事やトレーニングを試行錯誤していくことで効率的にボディメイクを進めることができると思います。
遺伝子タイプは血液型と同じで、生涯変わらないものです。遺伝子検査によって自身の遺伝子タイプを早い段階で把握していくことが、今後のトレーニング人生を大きく変えるかもしれません。
少しでも自分の遺伝子タイプを知りたいと思った方は、是非試してみていただくことをおすすめします。